蕪村易水にねぶか流るる寒さかな半紙●易水(えきすい)というのは、中国河北省の西部にある川。戦国時代、燕の荊軻(けいか)が太子丹のために秦の始皇帝を刺そうとして旅立つにあたり、易水のほとりで壮行の宴が張られた。そのおりに吟じた詩に「風蕭蕭トシテ易水寒シ壮士ヒトタビ去ッテ復還ラズ」というのがある。この易水の故事をふまえるとともに、芭蕉の「葱白く洗ひたてたるさむさかな」のような感覚的把握をこれに結びつけたものである。(「日本古典文学全集近世俳句俳文集」頭注による)ねぶか(根深)は葱(ねぎ)のこと。一日一書1673易水にねぶか流るる寒さかな蕪村